「教師」であれば、絶対に聞きたくない言葉は、
「学級崩壊」
でしょう。
しかし、残念な現実として、小学校の現場では「学級崩壊」が起きています。
僕のように教師生活を10年以上経験したの方であれば、「学級崩壊の質が変化してきた」ことは、実感されているのではないかと思います。
ひと昔前の「学級崩壊」と言えば、「教師になり立ての若手」について回る言葉でした。
しかし、最近では、「若手」に加え、「ベテラン教師」の「学級崩壊」が増えています。
その要因としては、様々なものがありますがその1つとして、
「社会と共に変化した子どもの変化に教師がついていけない。」
ということがあります。
みなさんもご存じの通り、10年前とは社会の構造が大きく変わりました。そして、子どもたちを取り巻く環境も大きく変化したことにより、
ということが大きな原因です。
少し厳しいことを言えば、
ということが望まれているのです。
そして、それに対応できなくなった「ベテラン教師」が、次々と「学級崩壊」を引き起こしているのが現在の教育現場なのです。
ことのよう実態を踏まえた上で、「学級崩壊」の対策となる5つポイントをまとめました。
若手も中堅も、はたまたベテランと呼ばれる先生方も、読んでいただき、子どもたちと共に楽しい学校生活を過ごす手立てとしてくださいね。
【学級崩壊の対策ポイント❶】子どもの「反発」と戦わない
最初に、「教師」としては受け入れがたい事実を書いておきます。
それは、
「子どもが『反発する』ことは、成長段階において仕方がない。」
ということです。
ここ最近、「アンガーマネジメント」が聞かれるようになりましたが、そのような話題が出てくるということは、大人も多少のことでイラっとして感情に任せた対応をしてしまいがちという警鐘だとも考えられます。
そして、教師がイラっとする要因は、「子どもの反発」でしょう。
だからこそ、「子どもは、大人に対して反発する時期がある」と心得ておく必要があるのです。
では、もう少し深掘りをして「子どもの反発の構造」について触れておきましょう。
ソトーらは、web上で集めた10歳から65歳までの120万人以上のデータを分析し、「パーソナリティがどのように変化していくか」を調査しました。
その結果によると、
「誠実性と強調性が、10歳から15歳くらいに急激に下がり、その後また急激に上がる。そして、年齢が上がるにつれて少しずつ高くなっていく。」
という結果を導き出しました。
「誠実性」というのは、「物事にこつこつ取り組む性格」といってもよいでしょう。「協調性」は、説明するまでもなく「他者とより良い関係を築いていく資質」です。
このように、「思春期」と呼ばれる小学校高学年から中学生の多感な時期に、親御さんや教師などの大人との関係が難しくなること。
もっと言うと、「子どもが大人に対して『反発』してくる」のは、パーソナリティという視点から考えても仕方がないといえるのです。
さらに、
「外向性や開放性も10歳から15歳にかけて下がる。」
という結果も出ています。
「外向性」というのは、他者に対しての接し方。「外向性」が高い方が「誰とでも仲良くできる」能力をもっています。
また、「開放性」というのは、「自分の気持ちをどれだけ他者に対してオープンにできるか」という指標です。
もちろん、高い方が他者に対して自分の気持ちを打ち明けやすくなりますね。
そのような資質が下がるというのですから、「人間関係に支障をきたす」ということはおおいに予想される事態なのです。
しかし、安心してください。
これらの能力がずっと下降し続けるわけではありません。上述したように、
ことも分かっています。
「教師」として知っておくべきことは、
「10歳から15歳において、急激にとっつきにくくなる。」
という子どもの「成長過程を理解しておく」ということなのです。

さらに具体的な「キーワード」を出して話をしていきましょう。
キーワードとなるのは、
「心理的リアクタンス。」
という言葉です。
保護者と話をしていると、

「何を言っても反抗してくるのです・・・。」
というご相談を受けることがあります。
確かに、このような態度は、
「2歳から始まり、思春期と言われる10代には顕著にみられる。」
と言われています。
このような態度を「心理的リアクタンス」なんていったりします。
そして、この態度も、子どもにとって決して悪いことではありません。
むしろ、
という前向きな成長の1つとして捉えることが大切です。
そして、「反抗してくる」ことが悩みの種であったとしても、「このような態度をやめさせよう!」と努力するのは、互いの消耗戦になるので決して戦いを挑まないでください。
難しい側面もあるとは承知でアドバイスをさせていただいていますが、
「何を言っても反発してくるという『今』の姿をありのままに捉え、お互いにとって丁度良い距離感を保つよう心がける。」
しかないのです。
万が一、対等に相手をしてしまうと、きっと親御さんや教師が思っていない方向へ流れていくことでしょう。
もちろん、言い争いになってしまったのであれば、互いに冷静でないわけですから、「円満解決」とはいきません。そのような関係性に陥ってしまうと最終的には、「力技でなんとか解決したように見せる。」しかないでしょう。
しかしながら、表面上は落ち着いていても、心理的には「不満」がたまっていくことは間違いありません。
そして、そのような子どもの「不満」が、「集団化」してときが、「学級崩壊」のスイッチになるのです。
「先生に反抗する」ということが、いわゆる「勇者行動」として子どもたちの集団に受け入れられてしまったのであれば、教師がどれだけ正論をつきつけても効果はありません。
このような状態にならないためにも、
「心理的リアクタンスを大人の余裕で受け流し、対等に戦わない。」
という対処法がマストなのです。
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【学級崩壊の対策ポイント❷】子どもの「自由」を奪わない
「学級経営」をしていくうえで、
「最も子どもたちに嫌がられること。」
は、何だと思いますか。
「学級」だけでなく「家庭」でも同じなのですが、それは、
なのです。
どういうことかをざっくり説明すると、
「今まで許していた『自由』を急にしめつけると、心理的リアクタンスMAX状態になるよ!」
ということです。
少し分かりにくいので、”あるある”な例をあげてみます。
「仕事から帰ってくると、先生から電話があり『お子さんが宿題を3日連続忘れています・・・。』と言われてしまった。その状態を何とかしようと、『ゲーム禁止』というルールを新たに立ち上げ、ゲーム機を取り上げた。」
という対応は、「絶対にだめ!!」ということです。
なぜかというと、
だからです。
「宿題」や「ゲーム」に関してそれまで口を出してこなかった親御さんが、急に「宿題しなさい!それまでゲーム禁止ね!」という決まりを押し付けたのなら、子どもたち反発心は、一気に燃え上がることでしょう。
そして、この反発心の煽り方は家庭だけではありません。学校生活においても、痛いほど当てはまります。
教師がやってしまいがちな落とし穴は、
ということです。
「今までオッケーだったものを急に禁止にする」ということは、絶対にやってはいけません。
もしも、「禁止」という体制をしくのであれば、
「最初から『禁止』して、ずっと『禁止』する。」
か、
「『禁止』するかどうかを、子どもたちと話し合う。」
という手立てが必要です。
簡単に言えば、「禁止」の理由について子どもたちが「理解」していればよいということです。
学級崩壊は、「子どもたちが抱いた教師への矛盾」から生まれることが多々あります。
特に、「教師の指導性」を強めに出してトップダウン学級経営をしていく教師は、ずっとトップダウンを続けなければなりません。
その「トップダウン」の力がおとろえたとき、「学級崩壊」の危険性はぐっと高まるのです。
そのような状況に自分を追い込まないためには、
「学級のルールは、『みんなで話し合って決める』というルールの定着を目指す。」
という戦略を取った方が、どのような状況になったとしても、安心だといえるでしょう。


【学級崩壊の対策ポイント❸】ダブルバインドに注意
「学級崩壊」対策でおさえておきたい続いての「キーワード」は、
「ダブルバインド!」
です。
きっと、みなさんも聞いたことがあると思われますが、ざっくり言うと、
といえば伝わるでしょうか。
例えば、子どもたちに向かって先生が、
と熱く訴えかけたとしましょう。
すると、ある子どもが本当に「自分のいいたいこと」を素直な気持ちで自由に発言したとしましょう。
すると、すかさず先生が、
と、イラっとした口調で言ったとしましょう。その子どもはどのような気持ちになると思いますか。きっと、



「いやいやいや。先生が自分の思ったことをいえって・・・。」
と思うでしょう。
いうまでもなく、このようなコミュニケーションを継続していくと、子どもたちの不満は順調に蓄積していきます。
もちろん、「時」と「場合」、もしくは「自分の心理的余裕の無さ」で、これまで主張してきたことと矛盾した内容になってしまうこともあるでしょう。
しかし、そのような「ダブルバインド」を「当然」のように行使してはいけません。
「立場は人を変える」というように、「教師」と呼ばれるようになるととたんに「権威性」を発揮しようとする残念な方もいるのです。
このように「昔ながらの教師像」を抱きすぎて、「教師の権威性」を振りかざすようなコミュニケーションの隙間にきっと「ダブルバインド」が潜んでいるのでしょう。
もちろん、少なからず「権威性」を発揮しないと「学級経営」というものは成り立たない場面もあります。
特に学級がスタートする4月は、子どもたちも「誰がこの学級の方向性を決めるのか?」という定まりきっていない状態に少なからず不安な気持ちがあるので、教師が方向性を決めないととたんに崩れていきます。
だからと言って、いつまでも教師が「権威」を握っていてはいけません。
よりよい学級は、「子どもが主体的につくっていく」ものですよね。
ここからは余談ですが、「#わかりあえないことから」という本の中に書かれていたことがおもしろいので紹介させてください。
どんな本なのかを簡単に説明すると、
「演劇を通してコミュニケーションスキルを伸ばす実践が紹介されている本」
です。
僕が納得感をもって読んだのは、次の表現です。
「教師が子どもたちに要求していることは、首をしめながら『表現しなさい』と言っているような状態である。」
と表現されています。
まさに教師の指導に見え隠れする「ダブルバインド」を的確に表現しているでしょう。
ぜひとも、子どもたちへの声かけが矛盾していないかを常にふり返り、納得感のある一貫した指導を目指しましょう。


【学級崩壊の対策ポイント❹】フリーライダーを許さない
さて、次の「キーワード」は、「フリーライダー」です。
日本語に直すと、
「ただ乗りする人。」
ということになりますね。
少し話は逸れますが、人間は「なるべく『楽』をして生きたい」という欲求をもっています。
これは、「根性論」ではなく、「本能的」な話。
ある実験では、「何も考えずにただただ機械的にこなせる仕事」と、「0から創造してつくり上げる仕事」の2種類があったとしたら、
ということが分かっています。
これは、「なまけもの」ということではなく、
という人間が生きていく上での戦略なのです。
このような「本脳的」な部分からも分かるように、
「学級内の『ちょっとしたずる』は、大きなトラブルのもとになる」
ので、注意をしないといけません。
例えば、掃除をさぼっている子どもを発見したら、きっと、
そんな報告が聞かれることでしょう。
まさに、現代に生きる「フリーライダー」じゃないですか!!
おもしろいことに、人間は進化の過程で、
という力を大きく発達させてきました。
だからこそ、「掃除」のような「みんなで協力する活動」に「フリーライド」している存在は、一早く発見されてしまうのです。
発見されたら最後。「教師」としても、何らかの対応をしなければなりません。
ここで考えないといけないことは、
ということです。
もちろん、「みんなと協力して掃除する」ことを求めることは必要ですが、もっと大切なことは、「掃除ライダー」へのコミットではないのです。
そう、
「掃除ライダーを、発見した子どもたち。」
に焦点化することなのです!!
実は、この問題の本質は、「損得感情」に起因しています。
を最大限にケアしなければなりません。
もしかすると、「本当はさぼりたい!」という気持ちを心の奥底に隠しながら教師へ訴えているかもしれないのです。
もっと言うと、「自分の分担に価値を見いだして取り組むことができる子ども」は、さぼっている子どもを発見してどうのこうのといわないかもしれません。
だからこそ、「ライダー予備軍」の子どもたちには、
「あなたは、どうするか。」
を問う必要があるのです!!
しかし、相手はまだまだ小学生。やはり、「掃除ライダー」の一挙手一投足に心をかき乱されてしまうお子さんも多いでしょう。
このような「ライダー見習い」をどのように望ましい集団に取り込んでいくかという話題です。ここで最善なのは、
と、問い返すことです!
ただただ、
が必要なのです!!
そして、
という返事が返ってきたのなら、大いに称賛して「これからもお願いね!」とよりよい姿を続けるように促します!
もしも、「自分もフリーライドしてしまった。」という答えだった場合は、再度「なぜ。」と問い返し、次はどのようにしたいかを考えてもらいましょう。
あくまでも大切にしたいことは、「自分で選択して取り組んでいる。」という気持ちです。
間違っても正論を振りかざし、従わせてはいけません。
「自分が掃除を頑張ると、どのようなよさがあるのか。」
をしっかりと自覚して取り組むことができる子どもを育てたいものです!


【学級崩壊の対策ポイント❺】教師の指導性を出しすぎない
最後のポイントでは、「教師の指導性が、学級の雰囲気を決定づける。」という話題を深掘りしていきます。
結論をいえば、
「教師が学級を締め上げれば上げるほど、子どもたちは苦しくなって子どもたちの関係性にゆがみが出てくる。」
ということです。
「教師」は、「子どもに力をつけるため」とか「学級をまとめたい!」という熱意からかもしれませんが、その方向性が子どものニーズに合ってしまっていない場合の悲劇なのです。
では、よく知られている古典的研究から情報を拾っていきましょう。何事も、基本が大切ですから。
リピットとホワイトは、
「大人が発揮するリーダーシップの種類によって、子どもの課題への取り組みかたや、他者とのかかわり方、集団の雰囲気が変わる。」
ということを研究から示唆しました。
その教師のリーダーシップですが、3種類に分けたのです。
1.専制型
→全ての方針を教師が決める。
2.民主型
→全ての方針を子どもの話合いで決め、教師は激励と援助をする。
3.放任型
→全ての方針を子どもの話合いで決め、教師の参加は最小限。
とういうグループに分けて、影響をみていきました。
1.「専制型」の場合。
「先制型」は、他のグループに比べて、
という結果がでました。その反面、
にあるということも分かりました。
つまり、「教師がいることで、子どもたちの能力を最大限に発揮することができる」と言えますね。
あなたも覚えがないでしょうか?
としますよね。
さらに、「専制型」は、
という「指導者の意志を確認する発言が多く見られた」ことも特徴的です。
「専制型」では、「自分の考え」というよりも、「指導者の考えに寄せていこう」とする子どもたちの心理がかいま見える結果となったのです。
2.「民主型」の場合。
「民主型」は、
ことが分かっています。
もう少し解説を加えると、授業の中で聞かれた子どもたちの言葉に、
ということも分かっています。
これが、どのような意味をもつかと言うと、
ということが分かっているのです。
「ダブルバインド」や「権威性」の話ともつながってくるのですが、やはり、「自分の意見が教師や友達に受け入れられる」という安心感は、学級づくりにおいて基本的なものなのです。
3.「放任型」の場合。
最後に、「放任型」ですが、
ということが分かっています。
やはり、「教師の指導性」を強く出しすぎるのも「子どもの主体性を奪う」という結果につながるのですが、だからと言って「子ども任せでよい」ということでもないのです。
「教師」は、「背中を押してくれる存在」であることが必要なのです。
さて、これまで紹介した3タイプの中で、一番学級が荒れそうなのは、どのタイプだと思いますか?
そうです! やはり「放任型」であることは間違いありません。
しかしですよ。以外と「専制型」もリスクを抱えることになります。そのリスクは、何なのかというと、
という結果も知られているのです。
やはり、「子どもの心理的に余裕がなくなる。」と、他者に対する「思いやり」とか「気遣い」どころではなくなってしまうのでしょう。
さらに興味深い情報を付け加えておきますね。
先生方によっては、
「それぞれのスタイルの理想は分かったけど、自分の性格もあるからなぁ。」
と心配になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、「そんな心配は無用だ!」とリピットとホワイトの研究から分かったことがあるのです。
なんと、上記に紹介した3つの学級スタイルですが、
というのです。
どういうことかというと、
という結論になるのです!
乱暴に言うと、
「リーダーシップを専制型にするか、民主型にするか、放任型にするかを自分で決め、そのようにふるまうことができれば、そのような学級になる。」
ということが示唆されているのです!
むしろ、「時」と「場合」によって「使い分ける」ことさえできるのです。
ぜひとも、自分にレッテルをはるのではなく、「自分が理想とする学級を率いるのにぴったりの指導者はどんなキャラなのか。」と客観的に作戦を立てて、「演じて」いきましょう。


まとめ。
本日は、「教師」にとってもっとも恐怖である「学級崩壊を防ぐポイント」を5つ紹介させていただきました。
至極当然のことですが、子どもたちは、
と思っていますし、もっと言うと、
と思ってスタートします。
だからこそ、どんな「教師」であろうと、学級のスタート時期は、「ついていこう!」と頑張りますし、「教師」の言うことに「頑張って応えよう」とするでしょう。
しかし、破綻は突然現れます。
あまりにも、子どもの実態とかけ離れた指導を続けると、さすがの子どもたちも頑張り疲れを起こしてしまうでしょう。
そこに気付くことができるかが勝負です。
真剣に「自分の力を伸ばしたい!」と燃えていた子どもたちの心が折れてしまったら選択肢は、2つしかありません。
か、
という、どちらも誰も幸せにならない選択肢です。
そのような過酷な状況に子どもたちを追い込まないためには、「教師の学級経営」しかないのです。
子どもたちにとってみれば、一生に一回の学校生活。
ぜひとも、「教師の理想」を叶えるのではなく、「子どもの願い」を実現できるような学級を子どもと共につくりあげてくださいね!
🔽「安心できる学級」のスタートは、一番最初の「自己紹介」がポイントです。


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