子どもたちが、生き生きと学ぶ学級があります。
その一方で、安心した学校生活を提供できない学級もあります。
教師の世界では、「学級経営」の手腕が問われます。簡単に言うと、「学級を安定させ、子どもたちに楽しい学校生活を提供する」ということでしょう。
そして、「学級の安定」は、一人ひとり違う個性をもった「教師」にゆだねられています。
そして、「教師」により、「落ち着かなかった子どもたちが、嘘のように穏やかになる。」場合があれば、「教師」により、「落ち着いていた子どもたちが、嘘のようにはっちゃける。」場合もあるのです。
では、その「子どもたちの反応の違い」は、なぜ生まれるのでしょう。
その答えは、一つではないでしょう。
しかしながら、ものごとの「成功法則」は多様でも、「失敗法則」には共通点があるのです。
本記事では、そんな「失敗指導法」の1つを紹介していきます。
ぜひ、反面教師として読んでみてくださいね。
▼やりがちな「失敗指導」とは。~給食編~
僕が教師として勤めていた学校の事例を紹介させてください。
きっと、みなさんの学校にも「給食週間」なるものがあるのではないでしょうか。
給食委員会が先頭に立ち、お世話になっている調理員さんへ感謝の気持ちを伝えたり、好き嫌いや三角食べ、栄養素など、自分の食生活について見直すきっかけとなる取り組みです。
僕も、その取り組み内容には、全面的に賛成です。
やはり、自分の体は「食べたもの」からできていますからね。
しかし、この手立てはいただけません。その「失敗指導」とは、
「給食の残食0プロジェクト」
です。
このような名前とは限りませんね。簡単に言うと「給食の残りを減らしましょう。」という目的のために行われる取り組みです。
もちろん、調理員さんたちは、子どもの年齢から考えて、バランス最高の給食を準備していただいているのですから、なるべく残さない方がよいですし、好き嫌いなく食べた方がいいに決まっています。
しかし、多少なり残食が出てしまうことも事実。
その残食を減らしていくことにも、個人的には大賛成なのですが、そのときに取られた手立てがよくなかった。
その手立てというのが、
「残飯の量を掲示する(写真つき)。」
という方法です。
戦術を練った教師側の意図としては、
「ほら、毎日こんなに残飯があるんだよ。大変でしょ。だから食べようね。」
という、人間の善意に付け入ろうとする作戦であることは分かります。
しかし、このような打ち手は世界中で逆効果であると「社会的に証明」されているのです。
例えば、
・国立公園から貴重な化石を持ち帰ってしまう不届きもの。
・診察をすっぽかす無責任患者。
このどちらのケースについても、「こんなにひどい人がいる。」というアピールをしたところ、
「ルールを守る人が増えるどころか、逆に無責任な不届きものが増えた!」
という結果を招いたのです。
「こんなにたくさんの人がやっているんだから、自分もいいよね。」
となってしまった結果なのです。
だからこそ、「給食残し0」を目指すのであれば、
「この学校では、こんなに給食を食べているんだよ。」
とか、
「ほら、ごらん。給食を食べる量がどんどん増えているでしょ。」
と、「食べる側を大多数」にした打ち出し方が正解なのです。
▼やりがちな「失敗指導」とは。~宿題忘れ編~
ここまで「社会的証明」の力がもろに裏目った事例をあげてきましたが、こりずにもう1事例あげます。
今回の事例は、「宿題忘れ編」です。
みなさんは、子どもが「先生~宿題忘れました。」と申し出があったら、どのように対応するでしょうか。
僕だったら、忘れてしまったことを受け止め「次は、どうする?」と未来へつながる投げかけをします。気分がよかったら、「よく、報告してくれたね。」と、「逆ほめ」(よくないことを素直に言いだし、逆にほめられること)して、子どもとの信頼関係を深める施策に出るかもしれません。
ここで、絶対にやってはいけない「失敗指導」をご紹介。
きっと、記事を読んできたみなさんであれば、なんとなく分かっているとは思うのですが、答えを書くと、
「今日は、宿題が〇人も忘れる人がいました。明日は、気を付けましょう。」
というアナウンスをしてしまうこと。
これこそ、「失敗指導」の奥義。完全に「よかれと思って逆効果」の典型例です。
なぜ、問題があるのかというと、繰り返しになりますが、
「問題を抱えている人を多数派にしてしまっている。」
ということが、最大の「失敗指導」要因です。
先生がちょっとだけイラっとして、宿題忘れについてこんこんと語っている際、子どもたちは、真剣に話を聴いている風の態度を取りながら、
「えっ、私意外に〇人も忘れたんだ。結構忘れる子、多くてよかった。」
なんて思っているかもしれません。
だからこそ、「宿題忘れ」に対する注意喚起になっているようで、実質なっていないのです。
では、どのように「宿題を持ってきてね。」と伝えるべきかですが、ストレートにやるのであれば、
「〇〇にんも宿題を持ってきました。みんな頑張りましたね。」
と、「宿題をやってきた人を多数派として紹介する」という方法は「宿題忘れ防止」に効果的でしょう。
もう少し、プレッシャーをかけるのであれば、
「〇〇人も宿題をちゃんとやってきてえらい!でもあと〇人でコンプリートだったのにおしい!!」
というように、無言のプレッシャーをかける方法もあるでしょう。
まだ他にもありますが、だんだんと性格悪いのがばれるので一旦やめておきます。
何が言いたいのかと言うと、とにかく、
「望ましい行動をとっている人が、たくさんいるよ!」
とアピールして、望ましい行動を増やしていくことが成功法なのです!

▼「社会的証明」よりも深い闇。
ここからは、完全余談ですが、子どもたちの将来にとっては意識しておくべき内容なので、書かせてください。
ちょっとした矛盾を明らかにしていきましょう。
その矛盾とは、「給食週間の終わり方」。
当然のように、
「みなさんのおかげで給食の残りが0になりました!」
となることへの疑問です。
なぜ、「社会的証明」理論では、完全に逆効果になるはずの打ち手に効果がでているのか。
これは、ずばり、
「教師の介入。」
によること間違いないでしょう。
いいんですよ。結果が出たのですから。
しかし、一点だけ言わせてもらうと、「食品ロスを減らそう。」とか「バランスよく食べようね」的な生涯必要な「食事との向き合い方」は、子どもたちに伝わっているのかということ。
さて、「給食週間」で、残飯を0にした子どもたちの心に残ったことは何なのでしょうか。
つづく・・・。
▼まとめ。
本記事では、「守ってほしいことほど、『守れている側』を大多数だとしてアピールしないといけないよ!」という内容をまとめました。
最後は、若干のホラー感を出してみました。
みなさんも、「減らしたい。」とか「増やしたい。」とか様々な目的に向かって打ち手を考えると思いますが、ぜひとも、逆効果にならないよう気をつけてくださいね!
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