
テストを返却すると、
「やった!100点!お小遣いゲット~!」
のような声が聞こえてくることがあります。すかさず、
「まじっ!お前んち、100点取るとお金もらえるの!」
と、興奮気味で訪ねる友達。きっと、彼の家庭では、夜な夜な激しい交渉合戦が繰り広げられたに違いありません。
気持ちは分かります。親御さんとしては、子どもに対して「主体的に」学習へ臨んでほしいという願いをもっていますから。しかし、その願いは残念ながら叶わないこともあります。
仕方がないので最後の手段。学習に取り組む代償として「報酬」を与えたり、時には「罰」を与えるという選択肢を取ってはいないでしょうか。しかし、この選択肢はあまりおすすめできません。もちろん、「罰」なんてもっての他。恐怖による学習は、効果なしなのは自明の理でしょう。そして、100円のような「ご褒美」を与えることも長期的に見ると、
「学習効果を下げてしまう。」
ことが分かっています。本記事では、その理由について解説していきますので、ぜひとも、お子様と相談する前にお読みくださいね!
▶テスト結果で「ご褒美」をあげてはいけない理由①
早速、結論から紹介しましょう。テスト結果で「ご褒美」をあげてはいけない理由は、ずばり、
「100点を取ることが目的になってしまう。」
からなのです!
学習というのは、「もっと知りたい!」という人間にとって根源的な欲求です。だからこそ「主体的」に臨むのが一番なのですが、そこに「報酬」がちらつくと事情は違ってきます。当然、学習に臨む目的が、
「好奇心ではなく、報酬。」
になってきますよね。確かに、一時的に「学習」に対するモチベーションは上昇するでしょう。しかしながら、テストが過ぎ去った後が問題です。きっと、一時的なモチベーションは一気に低下し、「知識」はもとより「学習の習慣化」なんぞ、早々に忘れ去ってしまうでしょう。
さらに、問題なのは「次のテスト」です。前回のご褒美に味を占めた子どもたちは、きっと次のテストも報酬を期待するのではないでしょうか。親御さんとしては、断るわけにはいきません。報酬がもらえないと分かった時の子どもさんの落胆は容易に想像できますものね。

▶テスト結果で「ご褒美」をあげてはいけない理由②
では、さらに恐ろしい内容に足を踏み入れていきましょう。
例えば、「100点を取ったらご褒美あげる。」という契約をしたとしましょう。そして、実際のテスト結果が「95点」だとしたら受け取った子どもさんはどう思うでしょうか。そうです、きっと、
「95点かよ! あ~ぁ、ご褒美なしか。」
と、報酬を取り逃がした残念さが頭の中いっぱいに広がることでしょう。しかし、大切なのは、
「95点が取れるよう努力した過程。」
であり、
「身についていなかった学習を振り返って次につなげる。」
という姿勢なのです。しかし、報酬が目的になっているとこのような「純粋な学習に対する好奇心」は失われてしまうのです。
さらに、報酬の亡者と化した子どもさんは、もしかるすると、
「どんな手を使ってでも100点を取ってやるぜ!」
と、心を燃やすかもしれません。
もちろん、「短期目標」」として100点を取るという通過点を設定するのは良いでしょう。しかしながら、「目の前の100点」を目標としてしまうと、
「ちょっとした『ずる』をする。」
という可能性が高まることが分かっています。
なんということでしょう!! 「報酬」がほしいという気持ちがあふれ出た結果、「カンニング」のような許されない行為に至る可能性もあるのです。
これは、「もの」のような報酬だけとは限りません。実は、「称賛の言葉」でも「ずる」が増えることが分かっています。どういうことかというと、
「100点取ってすごいね!」
のような、「結果」を称賛するような褒め言葉が、子どもに、
「100点意外価値がない!」
と、思わせてしまうのです!! これは、親御さんのみならず、教師もやりがちな過ちです。では、どのような「褒め言葉」が望ましいかというと、
「100点取ったのは、こつこつ努力したからだね!」
「毎日練習したから、100点取れたんだね!」
というような、「過程」を称賛するべきなのです。
▶学習効果をあげる「内発的動機づけ」。
では、学習に臨むにあたり、どのような状態が望ましいのかを解説していきますね。
ロチェスター大学の心理学者、エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した「内発的動機づけ」という考えが役立ちます。
内発的動機づけ」とは、
「表面的な結果ではなく、その行動によってもたらされる内面的な楽しみや意義を動機とする。」
ことです。具体的に言うと、「テストで100点を取る。」ということを目的とするのではなく、
「知らなかったことを知ることができた。」
「問題を自分の力で解くことができた。」
というような、「学習に対する純粋な楽しさ。」を動機にするということです。
いやいや、もう既に自分の子どもは、報酬がなければ行動しない「外発的動機づけ」の亡者になっていますよという方。その解決方法を書いていきますので安心してください。
思い出してください。子どもは大人に対して
「なんでなんで?」
と、何でも知りたがる時期がありますよね。しかし、時が経つにつれていつの間にか、「勉強しなさい!!」「え~、めんどー。」というやり取りが当然のこととして定着してしまっているかもしれません。
むしろ、「自分から勉強してやるぜ!」という子どもの方が稀でしょう。そんなとき、教師や親御さんから子どもへの「適切な外発的動機づけ」をする必要があります。意識したいキーワードは3つ。
①自律性
②有能感
③関係性
▶「内発的動機づけ」のこつ① ~自発性~
まずは、「自律性」について説明します。「自発性」とは、「自分の意思で学習している感」を出すことです。「勉強しなさい!」という親御さん発信のスタートは、完全に「やらされている感」につながります。そうではなく、子どもにが「自ら進んで学習している。」という気持ちで取り組むことができるよう助言してあげないといけません。
そのために役立つのが、
「学習内容や方法、時間等を選択させる。」
という方法です。例えば、
「今日のテスト勉強は、漢字からにする? それとも計算?」
というよう子どもが「選択」できるように問いかけてあげましょう。この手だてにより、「自分が選んでやっている。」という気持ちを提供することができるのです。
▶「内発的動機づけ」のこつ② ~有能感~
次に「有能感」についてです。ポイントを簡単に言うと、
「自分が決めた目標までやり遂げさせる。」
ということです。
失敗経験としてやりがちなのは、
「あまりにも高い目標を立ててスタートしてしまい、結局やりきれなかった。」「実力以上の問題に挑戦して、挫折してしまう。」
という残念な終わり方でしょう。これでは、「できなかった。」というを経験を積み重ねるだけで、「有能感」を下げてしまいます。
大切なことは、
「確実にやり遂げられる目標に挑戦すること。」
です。また、挑戦する問題の難易度も大切です。
「頑張れば、何とかなるかもしれない。」
という絶妙なレベルに挑戦することで、「自分はやりきってえらい!」「今日もなかなか頑張った!」という「有用感」を確実に獲得できるよう工夫してみてくださいね。
▶「内発的動機づけ」のこつ③ ~関係性~
最後に「関係性」とは何かを説明しますね。これは、子どもが、
「応援してもらっている。」
「支えてもらっている。」
という気持で課題に向かえるような環境をつくってあげることを言います。
どんなときでも、関係性が築かれている大人に「見守ってもらえている。」という「安心感」は、未知の問題へ果敢に向かっていくモチベーションを高めることにつながるのです。どんな状況でも一人で戦いに挑むのは心細いものです。ぜひとも、親として子どもが実力を最大限に発揮できるよう見守ってあげてくださいね。

▶まとめ。
本記事では、「テスト結果で『ご褒美』をあげてはいけない理由。」をまとめました。
日々、子どもたちと世間話をしていると、
「成功すれば、〇〇を買ってもらえる。」
「テストの点数が悪かったからゲームを取り上げられた。」
と、結果によって「報酬」や「罰」を与えるといった方法を使っている家庭は、かなり多いのではないかというのが僕の実感です。
確かに目の前に迫っている「テスト」という問題を乗り切るには、効果的なように見えるのです。しかし、子どもにとって大切なのは、
「自分の中に動機を見い出し、設定した目標に向かって取り組むという過程。」
なのです!! ぜひとも、長期的な見通しをもち、粘り強く学習することを楽しめる子どもとなるよう助言してあげてくださいね!!
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